BOON
クラブ・ヒットにとどまっていたアシッド・ジャズを今や完全にポピュラー化、
たった2年で世界の音楽ファンをトリコにしてしまったジャミロクワイ。
'70年代ソウルと母親のうたうジャズとに育てられたシンガーJKが今、みずからのルーツを初めて語る!
スポットライトを浴び、ソウルに歌いまくるジェイ・ケイ。そのしなやかな声に応えるように、
バンドの演奏もファンキー&グルーヴィーにヒット・アップしていく。'93年10月の初来日ライブとはくらべものにならない、
今のジャミロクワイはグレード・アップしたファンキー・ソウル・バンドになった。
ヨーロッパ・ツアー中のジャミロクワイをはるばるフランスまで追跡インタビュー。貴重な生の声をどうぞ!
Boon... ライブを見て、バンドのサウンドが抜群に良くなっているんで驚いたよ。
Jay... うん、それは間違いないね。一番大きな理由は、新しいドラマーのデリックのおかげだと思う。
彼はすごくタイトなドラムを叩くヤツでさ、バンドのサウンドを前に出してくれるんだ。
具体的に言うと、彼はドラムとベースとパーカッションの音の間にスペースを作って、それを自由に操ってる感じ。
Boon... 音の"間"をコントロールすることがファンキーなグルーヴを生み出すわけだね。
たしかに前のドラマーは、その点で単調だったような気がする。
Jay... そうなんだ。それに前のドラマーはステージに上がる前にハッパなんか喫っててさ(笑)。
僕たち、そういうの大っ嫌いなんだよ。自分だけの世界に入っちゃって、バンドとしての結束がなくなるんだ。それじゃダメさ。
Boon... ああいうファンキーでグルーヴィーなサウンドは君たち独特のものだけど、同時に'70年代の
ソウル・ミュージックやファンクが好きなんだなぁってことも感じる。やっぱりすごく好き?
Jay... もちろん大好きだよ。でも、誤解されやすいんだよね。みんな、僕がものすごいレコード・コレクションを
持ってるんじゃないかってね。でも実際は2枚しか持ってないよ。ジャミロクワイのファーストとセカンドだけ(笑)
Boon... ほんとかよぉ!?
Jay... へへへ。まぁ、音楽的なルーツについて言えば、僕は母親からすごく影響を受けてると思うんだよね。
彼女はジャズ・シンガーでさ、ロニースコッツ(ロンドンの有名なジャズ・クラブ)なんかでも歌ってた。
僕は母親のオナカの中にいる時から、色んな場所でたくさんの音楽を聴いてたってわけ。
それはもう、影響なんてもんじゃないよね。血となり肉となりって感じだよ。
Boon... それはすごい。でも、クラブとかでも色んな音楽を聴いたでしょう?
Jay... ティーンエイジャーの頃はクラブでソウルっぽい音楽をたくさん聴いたね。
アース・ウインド&ファイアーとか、クール&ザ・ギャング、スライ&ザ・ファミリー・ストーンとかのね。
クラブに行けば、そういうレコードを毎日のように聴けた。
でも、曲そのものはバッチリ覚えてても、それが誰の何ていうレコードかは知らなかったんだよ。
というのも、お金が全然なかったからレコードなんて買えなかったし、プレイヤーだって持ってなかったくらいさ。
だから、僕に影響を与えたのは、聞こえてくる音楽そのものだったんだと思う。
それを自然に覚えて、楽器ごとのフレーズまで全部、口ずさめるようになる。そういうことが僕の基礎になってるんだと思うよ。
Boon... そういえば、ジェイはよく、口で色んな楽器のフレーズを歌ってるよね。
Jay... そうそう。ガキの頃からあんなことをやってたんだよ(笑)。
でも、音楽をやるようになって、それが大きいな助けになってるな。
音楽理論じゃなくて、ひらめいたフレーズをどんどん歌っていって曲を作るわけだからね。
それがジャミロクワイの秘密かな(笑)。僕はこの方法が気に入ってるよ。
Boon... それはユニークだ。さっき言ったアーティストについて、もう少し。
Jay... えーと、'70年代前半のクール&ザ・ギャングはファンキーでカッコイイよね。スライもアースもね。
でもさ、彼らの前座をやるような、有名じゃないアーティストでも、ものすごくカッコイイ曲、素晴らしい曲はたくさんあるんだ。音楽の価値っていうのは、人気とか流行じゃなくて、曲そのものがいいか悪いかだけ、そう思うな。
Boon... ところで、パリのステージでもアディダスのTシャツにスニーカーというファッション。そんなに好きなの?
Jay... 好きだよ。だってシンプルじゃないか!ダンスするにもいいし。プーマとかだと、つま先の甲の所が大きすぎて何か
踊りにくい気がする。その点、アディダスはバッチリ。丈夫だし、スリー・ストライプのデザインもシンプルでベストだね。
Boon... たとえばナイキのスニーカーは?
Jay... なんかゴチャゴチャ、ピカピカして好きじゃない。
それにジャンプしたら50フィートぐらい飛んでっちゃいそうでさぁ(笑)。なんかなぁ......
Boon... やっぱりシンプルなのが好き?
Jay... そうだね。シンプルでプレーンなもの。ずっと残っていくようなもの。
それが基本だねだって僕はいたってシンプルな男だからさ(笑)
Boon... ジェイがデザインしてる"オレンダ"の服もそういうポリシー?
Jay... そうだよ。
Boon... ジェイがすべてデザインするの?
Jay... う~ん、僕がデザイナーって言えるのかなぁ。なにしろ始まったばかりだから......。
でもササッとデザイン面を描いたりはするよ。それと取材は僕が考える。コットンとか生成りのものを選んでる。
それと人工的なものをミックスしたいんだ。僕にとって一番大切なのは、5年後にもまだそれが着れるということなんだよ。
だから、流行のものじゃなくて、シンプルさを極めたものを作りたいね。たとえばこのジャケット。取材はすごくシンプルだよね。スペースカウボーイのロゴも小さく入ってるだけ。背中にでっかく入れても、来年は着たいと思わなくなっちゃうぜ、きっと。
服っていうのは、長く大切に着れるものであるべきだよ。
Boon... バーバリーの服みたいに?
Jay... ああ、バーバリーの服とかハロッズ(ロンドンの高級デパート)で売ってるものには本当に長持ちするいいものがある。
でも高級品すぎて、僕たちのもんじゃないよ。だから僕はオレンダでいいもの作りたいんだ。
なんか、僕が作るものってみんなそうだね。音楽もファッションも。物事はシンプルに、原点に返るべきだと思う。
Boon... なるほど。それがジェイの一貫した姿勢なわけだね。クラブに入りびたってた10代の頃からそうだったの?
ずいぶん悪いこともやったでしょ?
Jay... そ~んなことはないよ。ま、時々は悪いこともしたけどさ(笑)。ほかのヤツの車を勝手に乗り回したりね。
でも、自分の人生の中で何かやってやるぞっていう気持ちを常に持ってたことも事実なんだ。
だから脇道にそれても、ちゃんと戻ってこれたんだよ。
Boon... 音楽から受けたメッセージがジェイの支えになったということ?
Jay... うん。音楽って信じられないくらい素晴らしいものだと思う。本当に感動させてくれるし、イメージを豊かにしてくれる。
もちろん歌詞も大切だよ。音楽の中で、自分が信じるものに向かって立ち上がることができる。
僕自身の意見を述べることもできる。それを街角でただスピーチしたって誰も聞いちゃくれないよ。でも音楽でなら可能なんだ。
音楽は人間の心を動かすことができる。体をダンスさせ、ソウルを揺さぶることができる。僕はそう信じてるよ。
音と歌詞が調和した時、それが初めて可能になるんだ。僕がやろうとしてるのは、そういうソウルのこもった音楽なんだ。
ジェイってなんていいヤツ!ノドの調子が悪いにもかかわらず、一生懸命インタビューに答える様子から彼の人柄の良さが
伝わってくる。さて、ともすればチグハグになりがちだったメッセージとサウンドとのコンビネーションも、今はバッチリ。
そんなジャミロクワイが今まさに、日本をツアー中だ。彼らのグルーヴを楽しまないテはない。
とにかく最高のクラブ・サウンドなんだろう!
